題名「みゃお物語」
――――――――――――――――――――基本設定――――――――――――――――――――
主人公………水瀧 久嗣(みなたき ひさし)
ヒロイン……篠江 美垢(しのえ みく)
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『篠江ですが、水瀧久嗣くんは居ますか?』
「あ、俺ですけど」
『え、あ、久嗣くん!? 私、美垢だよ」
「美垢ぅ?」
正直分からない。
僕の通っている学校に、ましてや同級生なんかに“美垢”なんて名前の人物は知らない。脳内検索でもヒットしなかった。
「ごめん、分からないんだけど」
相手が電話越しから、大きな溜め息を吐いたのが良く分かる。
『友達、って分からないか。引越しする前のお友達、向かいの家の篠江さん。巨木の生えてる篠江家。分かるでしょ?』
「あ――」
死ぬ間際でもないのに、昔の記憶が鮮明に蘇る。走馬灯のように記憶が蘇る、とは良く言ったものだ。
「――巨木の生えてる篠江さんか!」
検索でヒットしたキーワードを頭に付けて、思い出した篠江さんの名前を叫んだ。
『……そっちのワードで覚えていたのね。でも、思い出してくれたからいいや』
今度は安堵の息を吐いたのが分かった。
「どうしたの、篠江さん」
『言い忘れてたことが、ちょっとあってね。それを伝えたかったの』
言い忘れていた、こと?
「何?」
『えっとね、決まってるじゃない。こんな時に電話だよ』
「え!?」
これって、アレだよな。噂の、ラヴコールからの告白。しかも、わざわざ何年も前に離れていったはずの僕に対する気持ちだ、なんて一途なんだろうか。
「それって……俺に対して、言いたいこと、だよな?」
『あたりまえだよ』
「ちょっと待って。深呼吸するから」
せっかく一途に思ってくれている彼女の告白なのだから、精一杯の喜びで返してあげよう。そうでないと、僕もモヤモヤとした気分になる。
『もう、いいかな?』
「う、うん。いいよ」
準備は完了した。これで精一杯の喜びで返せる。
せーのっ!
『貸した三千円、返してくれない?』
「ヤッ! ……た〜……」
見事だったよ、篠江ちゃん。その裏切り方、誰もが予想のつかない答えだった。
『じゃあ、今日の夜に駅前に来てくれない? 私はそこで待ってるから』
「う、うん。了解、した……」
『じゃね〜、また夜に〜』
散った、散ったよ、パ○ラッシュ……。
僕はもうダメだ。生きていく、自信がないよ。
「アンタにしては随分と長い電話だったわねぇ〜。彼女だったの? ラヴコールだったの?」
台所で昼ごはんを作っている母親が、朽ち果てた僕へと話しかけてくる。頭だけ覗かせて。
「なるはずだった」
「え?」
「彼女に、なるはずだった人から(脳内で)」
「……失恋なのね。お母さんはこれ以上、探りを入れないわ。ハイ、ティッシュ」
商店街で歩いていたら貰えそうな、某携帯電話会社のロゴが入ったポケットティッシュを投げつけやがった。おかげで顔面に直撃だ。
僕はそれを拾うと、部屋へと階段を駆け上がった。最後の段で右足の小指を当ててしまい、悶絶しそうになったのは言わずもがな。
僕はこれから、どうすればいいのだろう。
実は彼女、引っ越す前に思いを寄せていた人だったりもする。名前を忘れてしまったのは失礼極まりないのだが。
“嫌い”とは言われていないのだが、この出逢いの季節でこんなことを言われたら、僕に思いを寄せているなんてありえない。
これから、僕はベッドの上で悶えた。
僕は彼女を忘れない。いや、忘れたくても忘れれない。
そんな今日この頃だった。
タイトルに意味はありません。
この物語は、フィクションです。